企業経営の観点から見る「信用」と「信頼」について
こんにちは、タベちゃんです。今回は信用と信頼についての話です。
「信用」と「信頼」は非常によく似ていますが、異なる概念です。では、それぞれの定義の違いと、現実のどのようなものが「信用」「信頼」によって成り立っているのかを具体的に考えてみます。
「信用」と「信頼」の定義
「信用」
- 確かなものと信じて受け入れること
- 当事者間に設定される債権・債務の関係。
「信頼」
- ある人や物を高く評価して、すべて任せられるという気持ちをいだくこと。
う〜ん、純粋な言葉の定義からだと、正直よくわからないですねえ。 というわけで、ファイナンスに関するいくつかの書籍で、「信用」と「信頼」の違いについて調べてみました。
「信用」と「信頼」の違い
『ファイナンスの哲学 資本主義の本質的な理解のための10大概念』の著者である堀内勉さんは、社会学者である大沢真幸の言葉を引用しながら、信用と信頼について説明しています。
「信用」とはすなわち「無からの創造」であり、その本質は「きっと、この人は将来利子をつけて貸したお金を返済してくれるだろう」という期待を意味している。(いわゆる銀行の「信用創造機能」のこと)
一方「信頼」とはもっと情緒的で、人間の存在に関わるようなものであるという。倫理を守れなかった時の責任出会ったり、信用を守れなかった時に毀損されるものであるという。
まとめると、「信用」はビジネスライクなイメージで、要するに「お金が利子付きで戻ってくるという期待」のこと。
「信頼」は、信用よりも抽象度の高い概念で「倫理観を守れる相手だという期待」のことですね。
こう見てみると、ビジネスシーンでよく聞く「信用」という言葉ですが、それ以上に「信頼」という概念が人生においては重要な意味を持ってきそうですね。
ただ、ビジネスシーンにおいても、この「信頼」という概念は非常に重要だと考えられています。 経営学者の田中一弘は『「良心」から企業統治を考える』において、現在のコーポレートガバナンス論に底流する合理的経済人の考え方が、従業員との信頼関係に傷をつけていると警鐘を鳴らしている。つまり、「人間は元来利己的な存在である」という考え方が、ピグマリオン効果によって実現の随伴性として作用してしまっているのである。そして、これまでの日本の企業統治は「従業員のため、顧客のため、社会のために貢献すること」「経営トップとしてきちんと役割と責任を果たすこと」の歓びによって全りょを尽くすという形で行われてきたとして、積極的に再評価している。
また、経済学者の岩井克人は著書『経済学の宇宙』において、従業員との関係が倫理観によって成立しているという「忠実義務」の概念を述べている。忠実義務とは「一方の人間が他方の人間の利益や目的のみに忠実に一定の仕事をする義務」と定義づけられています。
よく考えてみると、給与が毎月一定額支払われているのも、会社からしたら「信用」を与えている、つまり「利子(給与以上の上乗せ)をつけて返してくれるという期待」を与えているわけです。 しかし、給与以上に働くことの動機付けをしているのは「信頼」、つまり会社の求める「忠実義務」のためなのですね。
なので、例えばその月のノルマを達成できなかった(「信用」に答えられなかった)としても、会社の成長のために必死で努力していれば次のチャンスをもらえる(「信頼」には答えられている)ということですね。
※ただ、会社視点とチーム視点だと、信頼と信用に若干のズレが出てくる場合もあります。
こう考えると、自分が普段もらっているものが「信用」に基づいているものなのか「信頼」によるものなのかを明確にすると、良いかもしれません。
また、信用においてもう一つ重要な概念として「利子」というものがあります。こちらについても別の記事でまとめて見たいと思います。
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